第47回技能五輪国際大会 (WorldSkills 2024) Web Technologiesに日本代表として出場しました!
こんにちは、戸田です。
先月(2024/9)にフランス・リヨンで第 47 回 技能五輪国際大会 (WorldSkills) Web Technologies に出場しました。
今大会では日本を含めた 60 か国・地域の 1,313 人の選手が参加し、 59 職種の競技が行われました。
公式 SNSなどでも発信されていますが、この記事では日本選手団の動きを全て紹介します。
こちらの記事で大会についてと WebTechnologies について解説しています。
まず雰囲気を理解する
このスライドを見ると WorldSkills に参加すると得られる経験がどんなものか分かります。
Web Technologies の内容や専門用語が含まれていますが、そこは流し見程度でいいと思います。
日本選手団のメンバー
選手と行動を共にするメンバー
- チームリーダー: 4 人
選手のサポートをしてくれます、 - 選手: 48 職種 56 人(デモ職種の 1 職種 1 名含む)
- 案内係の方: 5 人くらい(大体)
現地に詳しく、現地での説明やサポートをしてくれます。
その他のメンバー
- エキスパート: 49 人(デモ職種の 1 職種 1 名含む)
大会の運営と選手のサポートをしてくれます。 - 通訳者: 50 人くらい(バックアップ含む)
日程の表記について
WorldSkills では、日程をわかりやすく管理するために、ちょっと変わった方法を使っています。競技の日を中心に考えて、「C」(Competition の頭文字)を使って日にちを表しています。
例えば:
- 競技が始まる日は「C1」
- 競技 2 日目は「C2」
- その前の日は「C-1」
- 競技が終わった次の日は「C+1」
こうすると、競技日からの相対的な日程を理解できるので大会に向けて準備ができます。
日付を覚えるより簡単で、国や言語が違う人同士でも、すぐに今がどのタイミングなのか理解できるので分かりやすかったです。
大まかな日程
出発前(C-7〜C-6、9 月 4 日〜5 日)
- C-7、9 月 4 日: 都市センターホテルにて結団式
- C-6、9 月 5 日: 皇嗣殿下・妃殿下表敬、首相官邸および厚生労働省表敬訪問
渡航(C-6〜C-5、9 月 5 日〜6 日)
- C-6、9 月 5 日夜: 成田空港よりドバイ経由でリヨンへ出発
- C-5、9 月 6 日午後: リヨン到着、メトロポールホテルにチェックイン
大会前(C-4〜C-1、9 月 7 日〜10 日)
- C-4、9 月 7 日: リヨン市内見学、買い出し
- C-3、9 月 8 日: エクスカーション、歓迎レセプション
- C-2、9 月 9 日: 競技習熟
- C-1、9 月 10 日: 一校一国交流、開会式
競技期間(C1〜C4、9 月 11 日〜14 日)
- C1、9 月 11 日: 競技実施
- C2、9 月 12 日: 競技実施
- C3、9 月 13 日: 競技実施
- C4、9 月 14 日: 競技実施
(各日ユーロエキスポにて 8:30〜18:00 頃)
閉会式・帰国(C+1〜C+4、9 月 15 日〜18 日)
- C+1、9 月 15 日: 閉会式、フェアウェルパーティ
- C+2、9 月 16 日: 解団式
- C+3、9 月 17 日: リヨン出発
- C+4、9 月 18 日: ドバイ経由で帰国
詳しい動きの説明
C-7、9 月 4 日(水)
- 15:00~ 選手チェックイン
- 17:00-17:30 選手向け説明会
- 18:00-18:50 結団式
- 19:00~ 夕食(各自)、都市センターホテルで宿泊
C-6、9 月 5 日(木)
- 09:30-10:50 皇嗣殿下・妃殿下表敬
- 11:30-12:00 首相官邸表敬
- 13:00-13:20 厚生労働省表敬
- ↑ の予定はスマホの持ち込みが制限されていたため写真がありません 😭
- 16:00-17:00 ホテル日航成田チェックイン
- 22:30 成田空港発
成田空港での様子
C-5、9 月 6 日(金)
- 04:10 ドバイ到着
- 08:55 ドバイ発
- 13:50 リヨン到着
- 15:45~ メトロポールホテルチェックイン
- 18:00 夕食
リヨン到着
合計 60 人ほどの団体で移動しているので全員状況を把握するのが大変でした。
全員が気をつけて団体行動を心がけないと大きなトラブルに発展する恐れがあると感じました。(今回は何事もなかった)
メトロポールホテルでの夕食
ひつじのお肉が美味しかった!
C-4、9 月 7 日(土)
- 10:45-11:15 ユーロエキスポ外観見学
- 13:15-14:30 スーパーでの買い出し
- 14:45-15:45 ホームセンターでの買い出し
- 16:30 パールデューホテルチェックイン
早朝に時間があったのでホテルの周りを散歩(9:30 ~ 10:30)
フランスの川はゆったり流れていて気持ちよかったです!
セーリング、ランニング、サイクリングをしている人が多く、フランス人の健康意識の高さを感じました。
お昼ご飯(11:30 ~ 13:00)
コースでのお昼ご飯だったのですが、前の料理を食べ終わっているのに次がなかなか来ないことが多かったです。フランスでも他の国でも時間に余裕を持って行動した方が良さそうです。
ホームセンターとスーパーで買い出し
ホームセンターで競技に必要な道具などを購入できます。道具は基本的に日本から持ってきている選手が多いのですが、予備で道具を購入したり、フランスの道具に興味を持って見学していました。
スーパーでは今後の生活で必要な水、食料などを購入できます。基本的に食事や水は提供されますが、保険として水を買う選手は多かったです。(数本は買っておくといいと思います)
パールデューホテル
ホテル自体はとても綺麗でした。ただ設備は日本のホテルと比べると物足りなかったと感じます。今回のホテルには日本、デンマーク、ブラジルの 3 カ国が宿泊しました。ホテルでも交流する機会があったので仲良くなれるといいと思います。
設備の日本との違い
- 湯沸かしポットが部屋にない(ロビーにはある)
- ドライヤーがしょぼい
- 浴槽がない
- 冷蔵庫がない
- 歯ブラシがない
特に湯沸かしポットがないと日本食(カップ麺やお味噌汁)が食べられないので食文化が合わなかった場合に対応できません。携帯湯沸かしポットを持っていくのは必須かもしれません。
C-3、9 月 8 日(日)
- 10:00-12:00 ユーロエキスポでアクレディテーション
- 14:00-17:00 エクスカーション
- 17:30-20:00 歓迎レセプション
ユーロエキスポ(競技会場)到着
ユーロエキスポで食事
エクスカーション
エクスカーションとは学習や体験を目的とした短期の旅行や遠足です。
今回は 8 職種ほどのグループで以下の場所で海外の選手と交流しました。
行った場所
- 博物館(外観のみ)
- Mini World Lyon(世界の文化を体験できる施設)
- リヨンの街を一望できる公園
歓迎レセプション
歓迎レセプションは全選手が集まりご飯を食べながら楽しむ会です。全てのドリンク(ソフトドリンクのみ)、食事は食べ飲み放題です。いろんな国の選手と交流して仲良くなれるのでどんどん話しかけてみましょう!同じ職種の選手と仲良くなれたら競技でもリラックスして挑みやすいと思います。17:30-20:00 の予定ですが、途中で何本かホテル行きのバスがあるので予定がある人は早めに帰ることができます。
C-2、9 月 9 日(月)
- 09:00-20:00 競技習熟(終了時間は競技ごとに異なる)
競技会場マップ
競技会場の写真(Web Technologies)
この日は職種ごとの準備日でした。
Web Technologies では以下の確認をしました。
- 問題があった際の対処法の確認
- エキスパートを呼ぶ際は重要度によって緑・赤のシートを上に掲げて呼ぶ方法の確認
- 状況を説明する時に便利な問題点リストの確認(指差しで問題点を伝えることができる)
- PC の動作確認
- 使用ソフト、ライブラリ、フレームワークの確認
- 本番 DB への接続確認
- 提供されるウェブアプリ(競技時間のタイマーアプリや GitLab など)の確認
- マウス、キーボード、音楽の USB の確認
C-1、9 月 10 日(火)
- 08:30-13:00 一校一国交流
- 19:00-20:50 開会式(LDLC Arena)
一校一国でフランスの中学校を訪問
開会式の待機中
開会式が始まるまで待機会場で 30 分くらい待っていたと思います。特にやることもなく選手たちがひたすら気合いを入れる円陣を組んでました。
開会式!!
とにかく盛り上がりがすごい!日本の国旗を振りながら入場する際には「今から WorldSkills が始まるんだ!」という気持ちでワクワクしました。ショーなどもあって選手としても観客としても楽しめました。偉い人の挨拶など全部英語なので覚悟しましょう。
ここに選手として参加している時点で主役です。
あなたが次の国際大会の選手だったら、こんな大舞台でカメラを向けられて自分をアピールする機会は貴重なので、ぜひ目立ってください!
C1、9 月 11 日(水)
- 08:30-18:00 競技 1 日目
出発までの予定
- 朝食は 5:30~6:15 の間
- 集合時間は 6:40
- 出発予定時刻は 7:10(全員が集まり次第出発)
- 個人的にタクシーなどバス以外での移動も可(遅れた場合は自己責任)
ホテルに帰宅までの予定
- 競技が終わり次第、会場の食事会場で食事をとる
- 帰りのバスが 18:30, 21:00 に会場を出発するので集合場所に集合する
- ホテルに到着後、帰宅リストに記入し解散
開場されるまでの様子
8:30 になったら一斉開場になるため、選手たちはドアの前で待機しています。
競技中の様子(Web Technologies)
他の職種の様子についてもWorldSkills Japan の Xやflickrで確認できます。
C2、9 月 12 日(木)
- 08:30-18:00 競技第 2 日目
1 日目と特に変わりはありません。
C3、9 月 13 日(金)
- 08:30-18:00 競技第 3 日目
1, 2 日目と特に変わりはありません。
C4、9 月 14 日(土)
- 08:30-18:00 競技最終日
最終日になると競技が午前中で終わる職種もありました。
今回は日本選手団の方達のおかげで特別に 14:00, 16:00 に公共交通機関(1 日乗車券を受け取る)でホテルに帰ることができるようになりました。
その他、1, 2, 3 日目と特に変わりはありません。
C+1、9 月 15 日(日)
- 17:20-22:00 閉会式(GROUPAMA STADIUM)
- 22:00-01:00 フェアウェルパーティ(LDLC Arena)
閉会式の前に少し観光(9:00~14:00)
集合まで時間があったのでホテルの周辺を観光しました。たまたま通訳者の方達と出会って一緒にフェリーに乗ったりご飯を食べました。
料理の写真
- パン
- ベーコンのサラダ
- 鴨のソテー
- クレームブリュレ
ほんとに美味しかったです。本場のフレンチを食べることができて大満足でした!
閉会式!
全ての選手がこの閉会式で結果発表があります。メダルを獲得する選手、涙を流す選手などがいる中で自分の結果を待っていました。長年訓練を続け、WorldSkills という大舞台で結果を残すことがどれだけ凄いことか身にしみて分かったとともに、涙する選手の気持ちを考えるとグッとくるものがありました。
フェアウェルパーティ
閉会式終了後、隣のアリーナ(開会式と同じ会場)に移動しパーティが始まります。今回も食べ飲み放題(お酒あり)で海外の選手やエキスパート、通訳者とお話やダンスなどで交流できます。この写真で一緒に写っているのは Web Technologies の台湾の選手と通訳者、オランダの選手です。
C+2、9 月 16 日(月)
- 11:00-13:30 解団式
- 13:30~ メトロポールホテルチェックイン
解団式の様子
観光(14:00 ~ 18:00)
解団式後に時間があったのでホテルの周りでお土産を買ったり観光をしました。フランス版 Loop?みたいなものに乗ってリヨンを走り回りました。すごく気持ちよくてついつい遠くまで行ってしまいました。お土産としてチーズを買ったり途中で教会に寄ったり楽しかったです。
C+3、9 月 17 日(火)
- 12:45 リヨン空港到着
- 15:40 リヨン発(EK082)
- 23:59 ドバイ到着
C+4、9 月 18 日(水)
- 02:40 ドバイ発(EK318)
- 17:35 成田空港到着
疲れてて写真撮り忘れました 😭
成田空港に到着後、荷物を回収して自由解散でした。一緒に 2 週間行動してきた仲間とお別れして帰宅します。
結果
今回 WorldSkills Lyon 2024 Web Technologies に出場して、32 人の選手のうち 21 位でした。この結果には全く後悔しておらず、この大会に参加できただけで大満足です。
この大会の目的
この大会は職種ごとの技能を競う技能大会です。ですが、技能五輪全国大会とは大きく違い、WorldSkills では「楽しむ&交流」することも目的の一つだと思います。ただの競技会であればパーティを開いたり、大きな会場で開会式、閉会式をする必要もありません。各国の選手が技術を通して交流して楽しみ、いろいろな価値観を得ることで未来に向けて活躍していける人材を育てるのが WorldSkills の大きな目標だと思います。
一番好きな WorldSkills の考え方
僕が一番好きな WorldSkills の考え方があります。
この考え方は技能五輪全国大会にはなく WorldSkills の特徴を非常によく表していると思います。「全員がチャンピオン」ということは参加できたことがチャンピオンと同じくらい価値あることを意味していると思います。もちろんメダルを取ることは技術が秀でていて本当にすごいことだと思います。でも WorldSkills は技術だけでなく、様々な経験を積んで成長できる場だと考えます。
この大会で感じたこと
競技会として
-
選手のレベルの高さ
全国大会とは比べ物にならないくらい高いレベルでした。特に、チームプロジェクトでコロンビアとアゼルバイジャンの選手と一緒にアプリを作った時には生成 AI の使い方やアプリ制作のスピード感に驚きました。なんとかついていけたものの、ちゃんと英語が話せてコミュニケーションが取れたらもっと活躍できただろうと思います。 -
大会の規模
参加選手の人数がとても多く、会場もとてつもなく広い会場でした。開会式、閉会式ではアリーナやスタジアムを貸し切って盛大に行われます。こんな体験は一生無いと思うので本当に参加できてよかったです。 -
競技運営
全国大会とは異なり、選手・エキスパート・通訳者が競技エリア内にいます。最初の説明や競技中に困ったことがあればすぐに質問や相談をすることができます。また、事前に競技規則などの書類をチェックする必要があり、ルールもしっかりとしている印象でした。
楽しむ、交流
-
交流する機会
WorldSkills の目的の一つに「楽しむ&交流」があると思います。個人的にはこれが一番の目的と言ってもいいかも知れません。日程の中でも紹介しましたが、常にパーティや交流があります。その機会を逃さず仲良くなることがいい経験になりました。 -
フランスで感じたこと
フランス人はとても気楽に話しかけてくれます。ただ市場を見ているだけで話しかけられたり、スーパーの入り口で困ったらすぐに助けてくれたりしました。他人に興味を持ち、関わりを持とうとする姿は見習いたいと思いました。 -
コミュニケーションの大切さ
選手・エキスパートとの交流では基本的に英語で会話をします。僕自身も英語は得意では無いのでボディランゲージも使いながらコミュニケーションを取りました。この場でいっぱいコミュニケーションを取っている選手は楽しそうで生き生きしています。連絡を取って選手の国に遊びに行ったりもしている選手もいました。このようなコミュニケーションが人生を豊かにすると感じました。
変えていくべきこと
後輩に伝えていく
この記事を書いた理由も後輩に WorldSkills を伝えたいからです。正直、前回や前々回の大会の詳細が何もわからなかったし、会場に着いてから知ったことがたくさんあります。それを少しでも無くして、些細なことでも雰囲気を知っておくことで問題への対処をして、競技に集中できる環境づくりをする必要があると思います。なのでこの記事では競技に関係ないご飯や遊びのことも掲載しました。
連絡ツール(IT 人材からの視点)
今回の遠征で 1 番の課題と感じたのが選手団内での情報共有です。今回は個人の LINE で日本選手団のグループを作成して使用していました。大人数のグループで情報が錯乱しがちだったので、Slack や Discord などのチャットツールを使って目的別のチャンネルを作るといいと思いました。LINE を使用しつつもクラウドにデータを保存して参照しやすくしたり、カレンダーを使用して常に予定の共有をする方法でもよかったかもしれません。この大会運営だけではなく、日本全体で IT の知識をつけて組織に合うツールを使用した効率的な運営や業務をすることで今後の人材不足にも耐えられる組織づくりをしていく必要性を感じました。
国際大会を意識した全国大会にしたい
全国大会の参加者には国際大会をあまり知らない人もいるかと思います。僕が初めて全国大会に出場した時には国際大会の存在すら知りませんでした。もっと全国大会で国際大会に向けた選考を行なっている宣伝と、国際大会の様子を伝えると技能五輪全体が盛り上がると思うし、選手のレベルも上がると思いました。
後輩に伝えたいこと
WorldSkills へ行く時の注意点
- 移動について
移動手段は飛行機以外だと基本的にバスです。
日本選手団で行動するためバスの移動時間が長く辛いと感じる人も多いと思いました。 - 食事について
今回の大会でも食が合わない人がいました。最低限お味噌汁やカップ麺など日本食を持って行き、食べられる状態にしておくことが大切だと感じました。 - 体調管理について
全員必須で風邪薬などの薬を持って行ってください。今回の大会では体調不良者が何人か出てしまいました。(特に C+3 くらいから)日本に帰ったあとコロナとインフルエンザの報告も何件かありました。途中、チームリーダーが選手から薬を集めて体調不良の選手に配ることもしていました。競技中やその後の分まで薬を持っていき体調管理に気を付けることに注意してください。
次の WorldSkills 参加者へのメッセージ
もしこれから WorldSkills に参加する人がいればぜひ英語を勉強して海外の選手と時間の許す限り交流してほしいです。WorldSkills ではこの記事に収まらないくらいの感動と体験をがあり、大きく成長できます。10 代後半 ~ 20 代前半の年齢で何十カ国の海外の人と交流したことのある人は、ほんの一握りです。その貴重な経験を将来のために活かしていけるように頑張ってください。
最後に
今回、WorldSkills Lyon 2024 に参加できて本当によかったです。海外の選手たちと交流できたことで、今まで気にもしていなかった海外のニュースや日本と海外の関係に興味を持つきっかけになりました。そしていつか仕事でも海外と交流をしていきたいと思えるほどに視野が広がりました。そんな経験をさせてくれた WorldSkills とそれまでの成長を支えてくれた技能五輪全国大会、分科会、会社の方達、学校そして家族に感謝です。これから先、自分が得意とする IT の力で世界を便利にするために頑張っていきたいです。
参考資料